近年、マテリアルインフォマティクス(MI:Materials Informatics)を導入する企業が急速に増えています。特に、以下の分野のメーカーでは、MIの活用が前提になりつつあります。
- 化学メーカー
- 素材・材料メーカー
- 電池・半導体・高分子材料分野
- 製薬分野
化学を学んできた方の中には、「研究がやりたいのに、なぜプログラミング?」「MIって本当に現場で使われているの?」と疑問を持っている方も多いと思います。
化学企業でも、MIの導入が確実に進んでいます。企業にとってMIの導入は避けて通れないものになってきています。この記事では、多くの化学分野の大手企業が、MIを導入する理由を解説します。
MIとは
マテリアルインフォマティクス(MI)を簡単に説明すると一次のようになります。
「機械学習」などの情報科学を活用して、新材料の探索を加速する取り組み
近年、多くの企業で、このマテリアルインフォマティクス(MI)の導入が急速に進んでいます。この流れに乗ることのできない企業・研究者は、今後急速に淘汰されていくと予想されています。研究職を目指す人は、今のうちからMIに慣れ親しんでおくことをおすすめします。
マテリアルインフォマティクス(MI)については、下記記事で詳細を解説しているので参考にしてください。
企業がMIを導入する理由
企業がMIを導入する理由をまとめると下記のようになります。
- 従来の研究開発の限界が見えてきた
- 保有データを活かしきれていない
- 機械学習の発達により「予測」が可能になった
- 開発コストの削減・人材不足への対応
以下で、これら理由の詳細を解説します。
理由①:従来の研究開発の限界が見えてきた
これまでの材料開発は、以下のような流れで行われており、トライアンドエラー型の研究開発が中心でした。
- 仮説を立てる
- 実験する
- 結果を見て次を考える
しかし、従来の研究開発には、土のような問題点があります。
- 実験に時間がかかる
- 原料・装置コストが高い
- 組成・条件の組み合わせが膨大
特に高分子材料では、材料の構造・種類、分子量、添加剤種、それぞれの配合量、プロセス条件など組み合わせ・検討項目が膨大にあるため、この問題が顕著です。
マテリアルインフォマティクスを活用できるメーカーであれば、時間のかかる高分子材料の研究開発においても、短時間で最適な条件を見つけることができ、開発時間とコストを最小にすることができます。
理由②:保有データを活かしきれていない
多くの企業には、過去の実験データ(特性評価データ・失敗データ)が膨大に蓄積されています。
しかし、これらのデータは下記のような状態になってしまっている場合が多いのが現状です。
- Excelに眠ったまま
- 担当者が異動すると使われなくなる
- 深い考察がないままになっている
このような状態は非常にもったいないです。しかし、マテリアルインフォマティクスを活用することで、こうした「活用しきれていないデータ」を価値あるものに変えることできます。
理由③:機械学習の発達により「予測」が可能になった
MIの中核にあるのが「機械学習(Machine Learning)」です。
近年、この「機械学習」が大きく発達・普及しています。それに伴い、「予測精度」も大幅に向上しており、化学の研究・開発にも十分に活用できるレベルになっています。
また、これまでプログラミングを学んだことのない方でも、簡単に「機械学習」を使うことができるようなソフト・ライブラリーが提供されつつあります。
つまり、誰でも「機械学習」を使えるようになってきており、予測精度も高いものになってきていいます。
そんな「機械学習」を使いこなすことで、化学メーカーには以下のようなメリットがあります。
- 物性値の予測
- 有望な組成の探索
- 実験条件の最適化
例えば、「機械学習」を使うことで、材料開発は下記の流れで行えるようになります。
- 過去データを整理
- 機械学習モデルを構築
- 有望な条件を予測
- 実験は「当たりそうな条件」だけ行う
この結果、実験回数の大幅削減、開発期間の短縮が可能になり、研究者の負担も大幅に軽減することができるようになります。
企業にとって、「機械学習」を活用した「マテリアルインフォマティクス」を導入するのは、「流行」ではなく、最短で革新的な材料を開発し、熾烈な競争を勝ち抜くための「合理的な経営判断」です。
理由④:開発コストの削減・人材不足への対応
企業で材料化初を行うには莫大な資金が必要になる場合が多いです。上記で説明したように「マテリアルインフォマティクス」を活用することで、開発期間を大幅に短縮できます。その結果、開発コストを大幅に削減できます。
また、「遠くない未来に労働人材が不足する」ということが至る所で嘆かれています。化学メーカーも例外ではなく、近い将来に労働者の数は確実に不足します。そのような事態に備え、少人数でも材料開発が行える「マテリアルインフォマティクス」を導入しようとしています。
以上のことが、企業が「マテリアルインフォマティクス」の導入を急ぐ理由です。
これからの時代に研究者に求められるスキル
これまでは、下記のような人が下記のような人が求められていました。
- 化学の知識を持つ人
- 実験が上手い人
- 化学的な勘が冴える人
しかし、これからは、下記のような人材が求められるようになってきています。
- 化学の知識を持つ人
- 実験が上手い人
- 「機械学習」を活用できる人
「化学の知識を持つ」「実験が上手い」というスキルはこれからの時代にも必要とされます。しかし、これからの時代は「化学的な勘が冴える」ことよりも、「機械学習を活用できる」ことの方が重要になってきます。
つまり、「マテリアルインフォマティクス・機械学習」は一部の専門家だけの技術ではなく、研究者の必須スキルになりつつあるのです。
化学バックグラウンドを持つ人材が圧倒的に不足している
これまでの話を聞いていると「これらかの時代も化学の知識必要?機械学習さえできれば良いのでは?」と考えてしまうかもしれません。「化学の知識や実験のスキル」は、今後も間違いなく重要です。
なぜなら「マテリアルインフォマティクス」は「ITだけできる人」では成り立たないからです。
- データの意味を理解し、化学現象の解明に落とし込む
- 実験条件の妥当性を判断する
- 結果を研究にフィードバックする
これらは、化学・材料の知識がある人でなければ難しいためです。
以上のことから、現在の企業では、下記の人材を強く求めています。
化学を理解していて、機械学習も扱える人
化学を学んできた人にとって、「マテリアルインフォマティクス」は「キャリアの武器」になり得る分野と言えます。
MIを学ぶには何から始めればいいのか?
MIに興味を持った方の多くが、次の壁にぶつかります。
- 何から勉強すればいいかわからない
- 独学でPythonをやって挫折した
- 化学とどう結びつくのか見えない
最近では、材料・化学分野に特化したMI・機械学習講座や、研究職向けのプログラミングスクールも増えてきました。
独学が難しいと感じる場合は、体系的に学べる講座やスクールを活用するのも有効な選択肢です。講座やスクールに興味がある人は下記記事を参考にして下さい。
まとめ:MIは「研究を楽にする」ための技術
MI導入企業が増えている理由をまとめると、下記のようになります。
- 従来の研究開発の限界が見えてきた
- 保有データを活かしきれていない
- 機械学習の発達により「予測」が可能になった
- 開発コストの削減・人材不足への対応
マテリアルインフォマティクスは、研究者を置き換える技術ではなく、研究をより効率的に進める技術です。
マテリアルインフォマティクスを活用できる人は、これまでより短時間で成果を上げられるようになり、そうでない人は淘汰されていくと思います。
これを機会に、まずは「機械学習」の勉強から始めることをことをおすすめします。




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