教科書を読み終わったんだけど、次は何をやればよい?
院試の準備を始めたいけど、過去問に入る前にやっておくべき問題集は?
このような人には「大学院を目指す人のための有機化学演習」(以下、有機化学演習)が一つの選択肢にります。
この「有機化学演習」は定期テスト~院試基礎レベルの問題が収録されており、教科書を学習し終えた人が、教科書レベルを復習しながら、教科書より少しレベルの高い問題を新たに学べる問題集です。
この記事では「有機化学演習」の特徴・レベル・難易度などを紹介します。
「有機化学演習」の概要・特徴
「有機化学演習」の特徴が下記です。
- 大学の定期テストレベル~院試基礎レベルの問題を網羅
- 見やすいレイアウト
- 実際の過去問もあり
難易度 | 基礎~院試基礎 |
解説 | 一応あるが簡潔、踏み込んだ解説はない |
到達レベル | 中堅大学院は合格 難関大学には少し足りない |
独学しやすさ | ★★★☆☆ |
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
「有機化学演習」は定期テスト~院試基礎レベルの問題が収録されており、マスターすれば、院試でもそこそこ通用するレベルに到達できます。
難関大学を受験する人はこれ1冊では不安で、更にレベルの高い問題集に取り組んでおくべきです。ただ、「有機化学演習」を学習しておけば、高難度の問題集に取り組むための前提知識がわられるので、高レベルな問題集への接続もスムーズになります。高難易度問題集への事前準備のための問題集としても十分使用できます。
「有機化学演習」は、最近の発刊された問題集で、レイアウトが綺麗で見やすいです。ただし、解説が少なく、「反応が起きる理由」や「反応機構」にまで踏み込んだ解説がないのが残念な点です。使用する際は、教科書などで「反応が起きる理由」や「反応機構」を調べながら読み進めましょう。
有機化学演習の対象者
「有機化学演習」の対象者は次の人です。
- 大学レベルの教科書を一通り学んだ人
- これから院試の対策をはじめる人
- 有機化学を専門にしたい人
大学レベルの教科書を一通り学んだ人
大学の教科書を一通り勉強した後に「有機化学演習」に取り組んでください。「有機化学演習」には解説もありますが、丁寧とは言い難く、有機化学の基礎的な知識がないと学習を進めるのが難しいです。
下記の記事の中級レベルの教科書まで勉強した後に「有機化学演習」に取り組むことをおすすめします。
これから院試の対策をはじめる人
「有機化学演習」は、院試を控えている人に特におすすめです。院試の過去問では、解答例がない場合が多く、いきなり院試を解いても正確な答え合わせができないため学習効率が良くありません。
「有機化学演習」では定期試験レベル~院試基礎レベルまで網羅しているため、院試の過去問を解くための土台作りに最適です。先に「有機化学演習」を学習しておくことで、解答例がない院試を解いたとしても自力で理解できるようになります。
有機化学を専門にしたい人
有機化学者を専攻する場合、「有機化学演習」レベルの知識は必須です。「有機化学演習」をマスターできれば、実際に研究を行うようになっても正しい考察ができるようになります。
そのため、有機化学を専攻する人は「有機化学演習」は完璧にマスターすることを目指しましょう。
「演習有機反応」の良い点・メリット
- 定期テストレベル~院試基礎レベルまで網羅
- 構造解析の問題も充実
- 有名大学の院試過去問や論文の反応にも触れられる
定期テストレベル~院試基礎レベルまで網羅
「有機化学演習」では、定期テストレベルの基礎的な問題から院試で落とせないレベルの問題まで網羅しています。
中堅大学院を目指す人なら、これ1冊で院試まで対応可能です。ただし、難関大学を目指す人は、もう1段レベルの高い問題集に取り組んでおくべきです。
構造解析の問題も充実
大学院入試では、NMR、IRスペクトルから有機化合物の構造を決定させる問題が頻出です。しかし、多くの問題集では「構造解析」に関する問題が載ってなかったり、問題数が少なかったりします。
「有機化学演習」では「構造決定」を決定させる問題が多く収録されており、院試の対策も十分可能です。そのため、「有機化学演習」1冊で「構造決定」の問題までカバーできるのは大きなメリットです。
有名大学の院試過去問や論文の反応にも触れられる
「有機化学演習」には、実際に有名大学の院試で出題された過去問も掲載されています。これらの問題を解いていくことで「院試問題でも解ける!」という自信が付くし、過去問前の良いトレーニングになります。
それだけでなく、全合成の論文から抜粋して作成された問題も掲載されており、これまで学んできた有機反応が実際の研究でどのように用いられているかも学ぶことができます。
「有機化学演習」の悪い点・デメリット
- いきなり使うには向いていない
- 解説が丁寧でない
- 「反応機構」の問題が少ない
- 扱われていない分野・出題が少ない分野もある
いきなり使うには向いていない
「有機化学演習」は、全くの初心者が取り組むべき問題集ではありません。問題集なので基礎から有機化学を解説してくれているものではありません。そのため、「有機化学演習」に取り組む前に、有機化学の教科書を読んで、有機化学の基礎的な知識は習得しておく必要があります。
下記の記事の中級レベルの教科書までは勉強した後に「有機化学演習」に取り組むことをおすすめします。
解説が丁寧でない
「有機化学演習」の解説は簡潔で、詳しい解説はありません。そのため、わからないことが出てきた場合は、その都度、教科書やネットで調べる必要があります。
ある程度、有機化学を勉強した後に使用しないと満足に学習が進まなくなります。
「反応機構」の問題が少ない
「有機化学」では「反応機構」と「反応が起きる理由(駆動力)」を理解することが最も重要です。しかし、「有機化学演習」では「反応機構」や「反応の駆動力」を考える問題が少なめです。23章に「反応機構の記述」に関する問題が集められていますが、それでも問題数が少ないです。
また、初登場の反応でも「反応機構」の解説が全くないことも多いです。そのため、問題を解いていく中で「反応機構」が理解できない場合は、必ず、教科書やウェブで調べましょう。
扱われていない分野・出題が少ない分野もある
「有機化学演習」では、触れられていない分野もしばしばあります。例えば「クロスカップリング」「炭素以外の元素」などです。これらの分野は、難関大学の院試であれば出題されることもありますし、研究を行う上では必須の知識です。
また、「隣接基が関与する反応」についての出題も少なすぎます。「隣接基が関与する反応」は難関大学で頻出の分野なので、難関大学を受験する人は更にレベルの高い問題集で学習しておくことをおすすめします。
「有機化学演習」の使い方
- 基礎~標準レベルの教科書の内容を身につける
- 1章分の問題を解く
- 答え合わせ
- その章を3周する
- 次の章に進む
- 最後の章まで終わったら、もう1度最初から
- 5周以上する
基礎~標準レベルの教科書の内容を身につける
「有機化学演習」を学ぶ前に教科書で有機化学の基礎~標準事項を学んでください。
「有機化学演習」は、初歩から有機化学を解説してくれる教科書ではなく、問題集です。そのため、有機化学の基礎~標準事項を習得できていない人は解説を読んでも理解できないと思います。
下記の記事の中級レベルの教科書までは勉強した後に「有機化学演習」に取り組むことをおすすめします。
1章分の問題を解く
1章から順に解いていきましょう。
この段階では、解くことができない問題も多いとは思いますが、気にする必要はありません。最終的に、自力で解けるようになれば問題ありません。
答え合わせ
解いた問題の答え合わせを行っていきます。単純に「〇」や「×」をつけるのではなく「反応機構の確認」と「正解するにはどう考えればよいのか?」を意識して採点していきましょう。
理屈が理解できない箇所があった場合は、教科書やウェブなどで調べて「反応機構」と「考え方」を理解できるまで調べて下さい。
その章を3周する
「答え合わせ」の後は、もう1度、その章の問題を解いてください。
その章を1度解いて答え合わせした後、すぐに次の章に進む人もいると思いますが、その章をしっかり頭に定着させた後に、次の章に進むことをおすすめします。「有機化学演習」は問題量が多いので、頭に定着させないまま、次の章に進んでしまうとす、その章の内容を忘れてしまうからです。
そのため、「答え合わせ」の後は、その章の内容を記憶に定着させるためにもう1周しましょう!1度解いていますので、短時間で解き切れると思います。
もう1度その章の問題を解きなおしたら、さらに2周しましょう!合計3周すると、その章のほとんどの問題が頭に入ります。
次の章に進む
同様の手順で、次の章も進めていきましょう。
もちろん、次の章も解き終わった後は3周しましょう。
最後の章まで終わったら、もう1度最初から
最後の章まで、終わったら、もう1度と最初の章から解きなおしていきましょう。既に3周ずつしているとはいえ、最初の章の問題は頭から抜けていると思います。
それらの問題をあぶりだして、知識に定着させるため再度解き直していきます。ここでは、1周ずつで良いので、スピード感を持って進めていきましょう。
5周以上する
2周目が終わったら、何周も周回しましょう!5周する頃には、ほとんどの問題が長期記憶として定着していると思います。
ここまでやれば「有機化学演習」は完璧です。
「演習有機反応」の到達レベル
- 大学院の院試で差をつけられないレベルに到達
- 研究室に配属されてもやっていけるレベル
大学院の院試で差をつけられないレベルに到達
「有機化学演習」をマスターすれば、難関大の過去問の基礎レベルの問題は完答できるようになり、標準レベルの問題も解ける問題が多いと思います。有機化学が足を引っ張るということはなくなります。
中堅大学なら確実に合格できます。難関大学の院試でもそこそこ通用するようになります。配点次第ですが、他の教科が得意なら合格できると思います。ただし、難関大学を受けるなら、より確実性を上げるためにもう1段レベルの高い問題集にも取り組んでおくことをおすすめします。
研究室に配属されてもやっていけるレベル
ここまでで紹介したやり方で「有機化学演習」をやり込めば、研究室に配属されて研究を行うようになっても、困らないレベルに到達できます。
もちろん、自分の研究分野の勉強は続ける必要がありますが、その分野の勉強を行う場合でも「理解できない」ということは少ないと思います。
「有機化学演習」の次
「有機化学演習」をマスターした後は、基本的には志望大学の過去問に取り組めばよいです。ただし、旧帝大などの難関大学を受験する人は、次の問題集まで学習しておくことをおすすめします。
難関大学を受験する人は上記の問題集を学習した後に過去問に取り組みましょう

「有機化学演習」と「演習有機反応」の比較
今回紹介した「有機化学演習」と同じ著者が作成した「演習有機反応」という問題集があります。
「有機化学演習」と「演習有機反応」は著者が同じだけあって類似した部分が多い問題集です。ここでは、この2冊を比較し、どちらを使うべきかまとめておきます。
有機化学演習 | 演習有機反応 | |
難易度 | 基礎~院試基礎レベル | 基礎~院標準レベル |
網羅性 | 中 | ほんの少し高い |
問題量 | 多 | 普通 |
解説 | 簡潔 | 丁寧 |
- 難易度は「演習有機反応」>「有機化学演習」 但し差は僅か!
- 「有機化学演習」の方が問題量が少なく周回性良
- 解説は「演習有機反応」の方が圧倒的に丁寧
個人的には周回性と解説の丁寧さの観点から「演習有機反応」の方がおすすめです。到達レベルは両者で大きくは変わりません。強いて言うなら、「演習有機反応」の方が院試で頻出の「隣接基関与」も取り扱っているので、わずかに網羅性と到達レベルが高い程度です。
既に「有機化学演習」を買ってしまった人はわざわざ買い直す必要はありませんが、これからどちらかを買う人は「演習有機反応」を選んでおけば間違いないでしょう。
「演習有機反応」のまとめ
この記事では「有機化学演習」を紹介しました。「有機化学演習」の特徴は下記です。
- 大学の定期テストレベル~院試基礎レベルの問題を網羅
- 見やすいレイアウト
- 実際の過去問もあり
教科書を学んだ後の問題集の選択肢の一つになりうる問題集です。どの問題集を使うか迷っている人は1度手に取って検討しても良いと思います。
大学で使うような専門書は高いですよね?こういった専門性の高い教科書を少しでも安く購入したい人は、次の記事を参考にしてください。
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