これまでの時代は、化学メーカーの研究職は「実験ができる」「合成スキルがある」「化学的な発想力がある」といった能力があれば長くやっていける時代でした。
しかし近年、研究現場は急速に変化しています。
- 実験データは爆発的に増加
- 実験・評価装置は自動化・高速化
- 企業研究では「効率」「スピード」が最優先
このような環境で活躍できなくなるのが「データ分析や機械学習を扱えない研究者」です。
この記事では「データを扱えないことで生じる具体的なリスク」を化学系研究者目線で解説します。
研究現場は「実験中心」から「データ中心」へ移行している
これまでの研究開発では、研究者が経験と発想力を活かして実験を行っていました。しかし、近年では、多くの大手企業が「マテリアルインフォマティクス」を導入し始めています。マテリアルインフォマティクスとは簡単に説明すると下記です。
「機械学習」「データ分析」を活用して、新材料の開発を加速する取り組み
「マテリアルインフォマティクス」についてより詳細を知りたい方は、下記記事を参照してください。
マテリアルインフォマティクスでは、「データ分析」と「機械学習」を使って、従来より短時間で新しい材料を開発していきます。つまり「マテリアルインフォマティクス」を活用するには「機械学習」「データ分析」のスキルが必要になります。
これからの時代は、従来は研究者が行っていた下記の判断を「データ解析」「機械学習」を使って効率的・合理的に行うようになってきています。
- 何を試すか
- どの条件を優先するか
- どこで打ち切るか
そのため、これからの企業の研究員は、下記のスキルを持つ人が評価される状況になりつつあります。
- Pythonによるデータ解析
- 機械学習を使った物性予測
「機械学習」「データ分析」ができない研究者が直面する3つのリスク
ここまでで、企業が研究開発を効率的に行うために「マテリアルインフォマティクス」を導入を進めていることが理解いただけたかと思います。
このような「マテリアルインフォマティクス」が推進されている状況下では、「機械学習」「データ分析」ができない研究者は将来的に下記のようなリスクを抱えることになります。
- 研究スピード・成果で差がつく
- 常識的な発想だけでは革新的なものはつくれない場合もある
- 「実験要員」ポジションに固定されやすい
- 転職で大きく不利
研究スピード・成果で差がつく
マテリアルインフォマティクスを活用できている人とそうでない人では研究開発スピード・成果に大きな差が生まれます。
例えば、同じテーマを扱っていても、下記のような状態になります。
- データ解析ができる人
→ 仮説検証が速い・次の一手が明確 - データ解析ができない人
→ 感覚頼り・試行錯誤が増える
結果として、
「あの人は仕事が早い」
「あの人は実験量が多いだけ」
という評価の差が生まれます。
常識的な発想だけでは革新的なものはつくれない場合もある
化学をよく理解している人ほど、化学的に正しい検討を行います。化学的な常識を逸脱するような設計や検討はしないものです。これは化学の知識がある人だからこそできるもので、これかの時代も絶対に必要とされる能力です。ただし、これからの時代は、この能力「だけ」では不十分です。
化学的な常識の範囲内の検討は、他の誰かが既に実施済みであったり、自身の常識が間違っている場合もあったりします。
マテリアルインフォマティスを活用できれば、これまでのデータを「統計的」に解析できるため、化学的な常識の範囲内では気づくことができない材料・組成の設計に気づくことができます。既に多くの材料が開発済みである現代において、時にはこのような手法での材料設計が必要になります。
つまり、これからの時代は、化学の知識と機械学習のスキルを上手く使っていかないと優れた材料・化合物は開発できなくなります。
「実験要員」ポジションに固定されやすい
機械学習・データ解析ができない研究者は、下記のようになっていきます。
- 実験は任される
- 設計・戦略部分は任されない
これは短期的には問題ありませんが、
- 昇進
- 裁量の大きいテーマ
- 転職時の市場価値
という点で、確実に不利になります。折角、研究者として生きていくのであれば、単なる作業員ではなく、設計や検討戦略まで手掛けたいと考えると思います。また、会社では設計・戦略ができる人が昇進していくというのは至極当然のことです。
機械学習・データ分析ができるかどうかで、これからの研究者としてのキャリアに大きな影響を与えられます。
転職で大きく不利
近年の求人では、材料系・化学分野でも下記のような募集が多くなってきています。
- 「Python歓迎」
- 「データ解析経験あり尚可」
- 「MI経験者優遇」
機械学習・データ分析ができない人=応募できない求人が増える
というのは、現実的なリスクです。これからの時代、この傾向はますます加速していきます。
将来困らないためにも、今のうちから機械学習・データ分析に取り組むことを強くおすすめします。
機械学習・データ分析を身につけるには
「機械学習・データ分析が重要なのはわかったけど、何から始めればよいの?」と考える方も多いと思います。
材料開発に機械学習・データ分析を活用できるようになるには、下記の順で学習を進めていく必要があります。
- Python 基礎
- 機械学習基礎
- データ前処理
- 実データでモデル構築
- MI 専用ツールの活用
まずPython基礎~データ前処理まで学んで下さい。ここまで学べば、材料開発にデータ分析・機械学習を活用する方法(マテリアルインフォマティクス)の概要・基礎・流れは理解できます。
「機械学習・データ分析」を独学で学びたい方は下記記事を参考にしてください。
「機械学習・データ分析」を最短・効率的に身につけるには、オンライン講座やスクールを活用する方が効率的です。「機械学習・データ分析」を最短・効率的に学びたい方向けに「おすすめのオンライン講座・スクール」を下記記事で紹介しているので参考にして下さい。
まとめ:マテリアルインフォマティクスは「化学」と「データ」の融合分野
この記事では「機械学習・データ分析を扱えない研究者のリスク」を解説しました。再度、そのリスクを下記に記します。
- 研究スピード・成果で差がつく
- 常識的な発想だけでは革新的なものはつくれない場合もある
- 「実験要員」ポジションに固定されやすい
- 転職で大きく不利
マテリアルインフォマティクス(MI)は、
- 化学の専門知識
- データ解析・機械学習
を組み合わせた分野です。
つまり、
化学がわかる人ほど、強みを活かせる
のがMIの特徴です。
純粋なITエンジニアと違い、
- 化学的な考察を交えてデータを解釈できる
- 実験背景を理解できる
これは研究職出身者の大きなアドバンテージです。化学を学んできた人は、データ分析・機械学習を学ばない手はない。というのが私の感想です。
初めて分野は、学ぶのが大変だとは思いますが、近い将来に確実に大きなアドバンテージになります。将来、優秀な研究者として活躍するためにも、触りだけでも学び始めることをおすすめします。




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