「有機化学」を学ぶ最大の理由は「望みの分子を自在に作る」ためです。「望みの分子を自在に作る」ためには、「逆合成解析」を学ぶことが必須条件です。「逆合成解析」を学べば、複雑な構造の分子の合成ルートを考案できるようになります。
しかし、多くの教科書で、「逆合成解析」の分野は取り扱っていなかったり、取り扱っていても手薄だったりします。そのため、「逆合成解析」を学べば望みの分子を合成できるようになるとわかっていても、どうやって勉強すればいいかわからない人も多いと思います。
この記事では、逆合成解析初学者に最もおすすめしたい教科書「有機合成の戦略」を紹介します。
「有機合成の戦略」の概要
「有機合成の戦略」がどんな教科書であるか一言で現すと次のようになります。
「逆合成解析」のいろはを基礎から丁寧に解説!!
「有機合成の戦略」は「逆合成解析」を基本中の基本から丁寧に解説してくれます。また、解説も非常にわかりやすいので、「逆合成」を全く学んだことがない人でも簡単に理解できます。
「逆合成」は「有機合成の最大の要」といえる重要なものですが、ここまでわかりやすく説明してくれる本は他にありません。本書を用いれば、間違いなく「逆合成解析」を理解でき、自在に分子を作れるようになるでしょう。
「有機合成の戦略」の対象者
「有機合成の戦略」をおすすめしたい人は次のようになります。
基礎レベルの教科書を勉強し終えている人
「有機合成の戦略」では、基本的な反応については、理解している前提で解説がなされます。そのため、基礎レベルの教科書の内容は理解しておく必要があります。基礎的な知識さえあれば本書を問題なく読み進めることができます。
基礎レベルの教科書を学習した後に、本書に読み始めるようにしましょう。ちなみに本書には、基礎レベルの教科書では取り扱われていない反応も記載しされていますが、そういった反応はその都度覚えていけば問題ありません。
「逆合成解析」を全く学んだことのない人
基礎レベルの教科書は学習し終えたけど「逆合成」については全く勉強したことがないという人に、本書は大変おすすめです。
数ある「逆合成」の本の中で「有機合成の戦略」はトップクラスにわかりやすい本です。そのため、「逆合成」を初めて学んでいく人には本書を強くおすすめします。
「有機合成の戦略」のメリット
「有機合成の戦略」のメリットは次のようになります。
- 全くの初心者でも理解できるほどわかりやすい
- 必要な考え方を網羅
- 薄い
- 安い
全くの初心者でも理解できるほどわかりやすい
繰り返しになりますが、「有機合成の戦略」は解説がとてもわかりやすいです。もちろん、基礎から「逆合成」について解説してくれるので、「逆合成」を全く学んだことがない人でも、苦労することなく理解していくことができます。
「逆合成」を学習するための最初の1冊としておすすめできます。
必要な考え方を網羅
「基礎から解説するってことは、応用的なことは省略してて網羅性は低いんじゃ?」と不安に思う人もいるかと思いますが、そんな心配は無用です。
「有機合成の戦略」は、基礎から解説にもかかわらず、網羅性は高いです。この1冊で必要な知識は網羅できます。なので、安心して本書を読み込んでください。
薄い
「有機合成の戦略」は網羅性が高いけれども、本の厚さが薄いです。分厚い本だど最後まで読み切れるか不安になると思いますが、本書程度の厚さであれば1~3日程度で読み切ることができます。それでいて、網羅性も高いので使わないのがもったいないです。
安い
有機化学の専門書は高いもので多いですが、本書は比較的リーズナブルです。安いのに、わかりやすく、網羅性も高いです。この安価という点も、本書のおすすめポイントの1つです。
「有機合成の戦略」のデメリット
次に「有機合成の戦略」のデメリットを挙げます。
- 誤植が多い
誤植が多い
本書の唯一のデメリットは、ところどころに誤植があることです。読んでいると混乱することがあるので、改定を望んでいます。
ただし、誤植と言っても、内容が間違っていたりということは全くありません。逆合成解析と関係ない部分の官能基が記載され忘れていたり、炭素数が間違っていたりします。
本書を使用する時はこのことを頭に入れて読み進めましょう。頭に入れておけば、混乱することも少なくなると思います。
「有機合成の戦略」の使い方
「有機合成の戦略」の具体的な使い方を紹介します。
最初から最後まで読み進める
まずは、1ページ目から順番に本書を読んでいきましょう。解説がわかりやすいので苦労することなく読み進められると思います。また、薄い本なので3日もあれば十分読み切ることが可能だと思います。
2周目を読む
1周目を読み終えたら2周目を読みましょう。2周目は重要事項を復習するつもりで、テンポよく読んで下さい。1日で十分読み切ることができると思います。
例題の化合物を自分で逆合成しながら3周目を読む
2周目を読み終えたら、3周目はただ読み進めるだけでなく、例に上がっている化合物を自分の手で「逆合成」しながら読み進めましょう。自分の手で「逆合成解析」したものが正解か確認する感じで読んでいくと、飛躍的に「逆合成」の能力が高まります。
「有機合成の戦略」の到達レベル
「有機合成の戦略」の到達レベルは次のようになります。
逆合成に必要な知識を修得完了!
「有機合成の戦略」をマスターすれば、必要な知識は網羅できていると思います。「有機合成の戦略」のマスター後は、色々な化合物を自分の手で「逆合成」していくことで、ドンドン「逆合成力」が向上していきます。
「有機合成の戦略」の次
「有機合成の戦略」の次に行うべきことは次のようになります。
- ときどき「有機合成の戦略」を読み返す
- 全合成の論文などで逆合成解析の練習をしてみる
- 合成等価体を意識しながら勉強する
ときどき「有機合成の戦略」を読み返す
「有機合成の戦略」を勉強し終えても、ときどき復習して知識をメンテナンスしましょう。「有機合成の戦略」には「逆合成解析」に必要な知識が網羅されているので、月1回程度、「有機合成の戦略」を読み返すことをおすすめします。
面倒に感じるかもしれませんが、一度学習し終えているので、読み返すのに労力はほとんどかかりません。これだけで知識の定着率が大幅に向上します。
全合成の論文などで逆合成解析の練習をしてみる
「自分ならどのように逆合成解析をするか?」という視点で全合成の論文を読みましょう。「有機合成の戦略」で得た知識を使えば、ほとんどの化合物の「逆合成解析」ができるはずです。「逆合成解析」は自分の手で練習すればするほど上手くなります。この練習をしていけばどんな分子でも自在に合成できるようになります。
合成等価体を意識しながら勉強する
普段の勉強の際から、「この反応剤は、この骨格の合成等価体になる」という視点を取り入れていきましょう。この視点を取り入れながら勉強していくことで、飛躍的に合成のバリエーションが増え、合成の幅が広がります。
慣れてきたら、操作・精製の簡便性・試薬のコストも意識するようにしましょう。この視点は、特に企業で研究・開発をする人にとっては大いに役立つようになると思います。
「有機合成の戦略」のまとめ
「有機合成の戦略」は「逆合成解析」を初めて学ぶ人に最適の教科書です。「有機合成の戦略」の特徴をもう一度述べておきます。
逆合成解析のいろはを基礎から丁寧に解説!!
基礎から丁寧に解説してくれるにもかかわらず、網羅性も高いです。説明も非常に分かりやすいので、苦労することなく「逆合成解析」を理解できるます。
有機合成を学ぶ最大の目的は、分子を設計・合成できるようになることです。そのためには「逆合成解析」のスキルを磨く必要があります。自在に分子を設計・合成できるようになるために、まずは、「有機合成の戦略」で「逆合成解析」の勉強を始めましょう。必ず、分子を自在に合成できるようになりましょう。
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