化学系の会社に入社すると「危険物取扱者」を取得するように言われます。化学系のメーカーだと難易度の1番高い「甲種」を取得するのが一般的です。
しかし、いきなり「甲種危険物取扱者」を取得するように言われて、次のように感じる人も多いと思います。
「甲種危険物取扱者」を取得するには何を勉強すればよいの?
効率的な「甲種危険物取扱者」の勉強方法は?どのテキストを使えば良いの?
この記事では、1ヶ月の勉強で1発合格を果たした私のおすすめ勉強法を詳しく紹介します。もちろん化学メーカー以外の人にも参考になる勉強方法です。
危険物取扱者とは?
化学薬品を取り扱う工場や研究所などでは、「危険物取扱者」の資格をもった取扱者が必要とされます。「危険物取扱者」にはいくつかの種類があり、どの範囲の危険物を扱えるかを示しています。以下に危険物の種類の詳細を解説します。
危険物取扱者の種類
甲種危険物取扱者
- 取扱可能な危険物: すべての危険物
- 特徴: 最上位の資格で、すべての危険物を取り扱うことができます。甲種取扱者の資格を持つと、どのような危険物であっても取り扱いや管理ができるため、業務範囲が広いです。
- 試験内容: 法令、物理・化学、火災予防・消火方法の全てを網羅します。
乙種危険物取扱者
- 取扱可能な危険物: 単独で取り扱い可能な危険物
- 乙種第1類: 酸化性固体(硝酸カリウム、塩素酸カリウムなど)
- 乙種第2類: 可燃性固体(マグネシウムなど)
- 乙種第3類: 自然発火性物質及び禁水性物質(黄リン、カルシウムカーバイドなど)
- 乙種第4類: 引火性液体(ガソリン、灯油、エタノール)
- 乙種第5類: 自己反応性物質(過酸化ベンゾイルなど)
- 乙種第6類: 酸化性液体(過酸化水素、硝酸など)
- 特徴: 乙種は、複数の種類があり、それぞれ特定の種類の危険物を取り扱える資格です。全体的に甲種に比べて取り扱う範囲は狭いですが、特定の業務や施設においては有用な資格です。
丙種危険物取扱者
- 取扱可能な危険物: 限定的
- 特徴: 丙種は家庭用のガスボンベや消火器などの管理といった「小規模な危険物」の取扱いに限定されます。乙種や甲種よりも難易度が低く、特定の場面で使われます。
乙種危険物取扱者の資格を1つ取得した後、他の種類の乙種資格を追加で取得することはできます。例えば、乙種第4類(引火性液体)をはじめに受験・合格した後、乙種第1類(酸化性物質)などを再度受験することで、乙種第1類と4類の危険物を取り扱うことができるようになります。
しかし、化学メーカーなどでは、扱う薬品(危険物)が多岐にわたるため、乙種を取得してくよりも、はじめから、すべての危険物を取り扱える甲種を取っておく方が無難です。
いかでは「甲種危険物取扱者」に絞って解説を進めます。
受験資格
「甲種危険物取扱者」は誰でも受けられるわけではなく、簡単に受験資格をまとめると以下のようになります。
- 大学で化学に関する学科を修めて卒業した者(工学部化学系、農学部化学系、薬学部等)
- 危険物取扱者乙種を複数取得し、一定の実務経験がある者
- 国家資格(化学系)取得者
化学メーカーに就職する人なら、ほとんどの人が上の条件のいずれかを満たしていると思います。ただし、細かい条件があるので詳細は次のリンクから確認してください。
試験の出題科目
試験は以下の3科目から構成されます。
- 危険物に関する法令
- 物理学及び化学
- 危険物の性質並びにその火災予防・消火の方法
1の「危険物に関する法令」と3の「危険物の性質並びにその火災予防・消火の方法」については、暗記がものをいう科目です。時間をかけてしっかり暗記すれば必ず合格点を獲得できるようになります。
2の「物理学及び化学の基礎理論」は、高校基礎レベルの化学の問題が出題されます。化学メーカーに就職した人であればノー勉でも合格ラインに到達できます。実際私は、時間がなかったので、ほぼ勉強しませんでしたが、全問正解できました。
甲種危険物取扱者試験の試験方式
試験の形式
「甲種危険物取扱者試験」はマークシート方式(選択肢から答えを選ぶ形式)です。選択式の問題のみが出題されます。
試験時間と問題数
- 試験時間:2時間30分(150分)
- 危険物に関する法令:15問
- 物理学及び化学:10問
- 危険物の性質並びにその火災予防・消火の方法:20問
上で述べたように「甲種危険物取扱者」で3科目から出題され、合計で45問の問題を解いていくことになります。
45問と聞くと多いと思うと思いますが、試験時間が150分もあるので、時間が足りないということは絶対ありません。
合格率と合格ライン
合格率
「甲種危険物取扱者試験」の合格率は「15%〜20%」程度とされています。試験の難易度と範囲が広いため、難しいと感じる方も多いです。合格率が低く、難易度は高めですが、テキストをしっかり勉強し、過去問を繰り返し解くことで、確実に合格できるような試験です。
合格ライン
甲種危険物取扱者試験では、以下の合格基準があります:
- 各科目の得点率:各科目の得点が60%以上
このため、1科目だけではなく全体をバランスよく点数を取ることが必須になります。
合格後のメリット
「甲種危険物取扱者」を取得することで下記のようなメリットを享受できます。
- 危険物の全類の取り扱いが可能になる
- 工場、化学プラントでの昇進・転職に有利
- 技術系公務員や消防署等でも有利に働くことも
資格を取ってしまえば、昇進に有利に働くことはもちろん、転職の際にも役に立ちます。「甲種危険物取扱者」は難易度の高い試験ですが、メリットも多い資格なので早い段階で取得しておくことをおすすめします。
効率的な勉強法
まず「甲種危険物取扱者」の各科目の特徴を把握します。ここでしっかり押さえているだけで、勉強の効率が段違いに上がりので、必ず読んで傾向を覚えておいてください。
「甲種危険物取扱者」の各科目の特徴
- 法令:暗記の勝負!出題パターンも決まっている!
- 化学・物理:高校基礎レベル!大学卒の人であればノー勉でもギリギリ合格ラインに到達できる。
- 性質・消火方法:暗記の勝負!出題パターンも決まっている!実験経験者はかなり有利!
上記の特徴を踏まえた上で次から紹介する勉強を実施してください。
おすすめの教科書・テキスト
「甲種危険物取扱者」を突破するには下記の教科書をおすすめします。
色々なテキストに手を出すより、この1冊をやり込むことが重要です。さらにこのテキストには、過去問も付属しているので、問題演習をすることもできます。この1冊をやり込むだけで9割以上と得点できます。実際、私もこのテキストを集中的に取り組みましたが、満点で合格できました。
このテキストの良いところは下記です。
- 説明がわかりやすい
- 出題傾向がしっかり分析されて作られている
- 「語呂合わせ」が暗記の役に立つ
- 過去問が付属
おすすめの問題集(過去問集)
上記のテキストを終え、時間がある人は「過去問集」にも取り組みましょう。
「甲種危険物取扱者」は出題パターンが決まっており「過去問」と全く同じ問題が本番の試験で出題されることも多いです。時間がある人は「過去問集」に取り組むことをおすすめします。
ただし、個人的には「テキストと付属する過去問」で十分に合格可能と思います。そのため、まずは「テキスト」を完璧にすることを目標にし、それでも時間がある場合は「過去問集」に取り組んで合格をより確実にするといった戦略が良いと思います。
学習スケジュール
以下は理系の大学出身者を想定したスケジュール例です。
期間 | 内容 |
---|---|
1週目 | 全体構成の把握+「法令」をざっと一周 |
2週目 | 「法令」の暗記 |
3週目 | 「危険物の分類」と性質の暗記 |
4週目以降 | 問題演習+苦手分野の勉強 |
1日1~2時間、全体で30~60時間を目安にすると良いです。3週目までに一通りの事項を暗記することを目標に進め、4週目以降は過去問などで問題演習をしていきます。過去問演習で不正解だった箇所は、あなたの弱点ですので、テキストに戻って暗記し直していきます。
また、過去問演習を行えば自分の苦手分野を把握できます。その苦手分野はテキストを読み込み、知識を補強するようにしましょう。
このスケジュールには「物理・化学」分野の勉強が含まれていませんが、大学受験をしたことのある人であればノー勉でもギリギリ合格ラインに到達できるため入れていません。4週目以降の試験問題演習の時に一緒に勉強すれば十分です。実際私は上記のスケジュールで合格できました。
独学が苦手な人は「通信講座」がおすすめ!
独学で「甲種危険物取扱者」に合格するには、「自分でテキストを読んで勉強する」「自分でしっかりスケジュール管理をする」能力が必要になります。
「本を読むより、映像を見ながら勉強したい」「スケジュール管理はやって欲しい」「わからないことがあれば質問したい」という人は通信講座を利用するのがおすすめです。
乙種、柄種の通信講座はたくさんありますが、「甲種危険物取扱者」に対応している通信講座はほとんどありません。それだけ「甲種危険物取扱者」の難易度が高いということだと思います。「甲種危険物取扱者」に対応しているおすすめの通信講座は下記です。
小ワザ:実験経験がある人は暗記が楽!
研究生活の中で使用したことがある薬品とリンクさせながら勉強することで、暗記が大幅に楽になります。例えば下記です。
- アセトン・トルエン・・・沸点低い→4類1石
- キシレン・・・沸点高い→4類2石
- 1石と2石の境目はこの辺
- アセトンは溶剤抽出に使えない→水溶性→指定数量400L
- トルエンは溶剤抽出に使える→非水溶性→指定数量200L
このように、実際に扱ったことのある溶剤などは覚えやすいです。実験経験がある人は、実験経験の無い人に比べて、暗記が楽になります。自分の使用したことのある薬品を思い出しながら勉強すると暗記が捗ります。
まとめ:「甲種危険物取扱者」は短期で合格可能!
「甲種危険物取扱者試験」は化学業界で働くなら必須の資格です。昇進や転職にも有利に働きます。
「甲種危険物取扱者試験」の難易度は高めですが、体系的に知識を整理して取り組めば、十分短期間で合格可能です。特に化学系のバックグラウンドをお持ちの方なら「物理化学」や「性質分野」は有利になります。
1度取得すれば、一生役に立つ資格なので、勉強は大変ですが、とっとと取得しておくことをおすすめします。
化学系のバックグラウンドをお持ちの人は、化学で学んだ知識を思い出しながら勉強すれば効率的に合格を目指せます。
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