「有機化学の勉強をはじめたけど、説明が堅苦しすぎて読むのが苦痛!」
「教科書の説明が難し過ぎる!重要箇所がどこなのかも分かりづらい!学習が思ったように進まなくてストレスを感じる」
上記は有機化学を学びはじめた人に共通する悩みだと思います。古来からある教科書の多くは上記の点への配慮が全く無く、読み進めづらいのが弱点です。多くの人が、堅苦しい説明文を読むのに嫌気がさして、途中で学習をやめてしまい、有機化学が嫌いになっていきます。
もっと読みやすく、それでいて有機化学の知識がしっかり身につく教科書が、ついに発刊されました。
この記事では「マリンス有機化学」はどんな特徴の教科書なのか紹介します。
他のおすすめ教科書については下記記事で紹介しているので、是非ご覧ください。
「マリンス有機化学」の概要
「マリンス有機化学」の概要は下記です。
難易度 | 基礎~標準 |
解説 | 語りかけるような解説で読み進めやすい 重要事項が強調されている |
演習問題 | 有(解答別冊) |
独学しやすさ | ★★★★★ |
おすすめ度 | ★★★★☆ |
- 語りかけるような解説で、講義を聴いているような教科書
- 重要事項が強調されていて、どこが大切かわかりやすい
- 初級者向けの教科書で標準レベルまで到達可能(他の有名教科書と同レベル)
「マリンス有機化学」の最大の特徴は「語りかけるような解説」です。「マリンス有機化学」で勉強していると、まるで講義を聴いているような感覚になります。講義調で解説が進むので、理解しやすく、読み進めやすいです。また、欄外に「キャラクター」が頻出します。このキャラクターが理解を助ける良いコメントをしてくれます。難解な解説を読み進めるのに苦痛を感じる人にはおすすめしたい教科書です。
有機化学の勉強では、他の事柄にも応用できる「一般的な重要事項」を抑えながら学習を進めていくことが重要ですが、「マリンス有機化学」では「重要事項」が強調されており、どこを力を入れて覚えればよいか一目でわかる構成になっています。
教科書のレベルとしては「マクマリー有機化学」や「ボルハルトショワー現代有機化学」と同程度で、マスターすれば中級レベルに到達でき、国公立大の院試にも対応できるようになります。
「マリンス有機化学」は比較的新しい教科書で、現代のニーズを満たす良い教科書です。この教科書を使えば「有機化学が苦手」という人が少なくなると思いいます。
「マリンス有機化学」がおすすめな人

- 難しい文章を読み進めるのに苦痛を感じる人
- 大学有機化学初学者(高校レベルの化学の概要を把握している人)
- 問題演習もやりたい人
難しい文章を読み進めるのに苦痛を感じる人
「マリンス有機化学」の解説は、「語りかけるような解説」で他の教科書より読み進めやすいことが大きな特徴です。他の教科書のような固い解説を読み進めるのに苦痛を感じる人には大変おすすめの教科書です。
大学有機化学初学者(高校レベルの化学の概要を把握している人)
「マリンス有機化学」は初めて大学レベルの有機化学を学ぶ人に適した教科書です。大学レベルの有機化学を基礎から丁寧に解説してくれます。
ただし、「マリンス有機化学」は、基礎から解説してくれているといっても、あくまで大学用なので、高校レベルの化学の概要を把握できていることが前提です。
まず高校レベルの化学を未学習の人は、入門レベルの簡単な教科書で構わないので、まずは高校レベルの教科書から学習することをおすすめします。
問題演習もやりたい人
「マリンス有機化学」では各章の最後に章末問題が掲載されています。
このブログでは何度も述べていますが、有機化学の知識を身につけるには「教科書を通読による知識の理解・暗記(インプット)」→「問題演習による知識の確認・出力(アウトプット)」の流れで勉強を進めることが重要です。
「マリンス有機化学」は、この流れで勉強しやすい構成になっている点もおすすめのポイントです。
「マリンス有機化学」のメリット・良いところ

- 語りかけるような解説
- 重要事項を強調
- 基礎から解説が始まって標準レベルまで到達可能
- 問題演習が豊富
語りかけるような解説
「マリンス有機化学」の最大の特徴は「語りかけるような解説」です。他の教科書のような堅苦しい解説とは一線を画す解説です。語りかけるような文調で解説が進むので、理解しやすく、読み進めやすいです。欄外に「キャラクター」が頻出します。このキャラクターが理解を助ける良いコメントをしてくれます。
固い表現の教科書を読んでいると、うまく理解できなくて何度も読み直すということが頻繁に発生しますが、「マリンス有機化学」を使って学習すれば、そのような無駄な時間が生じにくくなります。
重要事項を強調
有機化学を勉強する際、教科書に記載されていること全てを覚えようとしても、教科書に記載されている事項は膨大なため不可能です。有機化学全般に当てはまる普遍的な法則や考え方などの「重要事項」を取捨選択して覚えていく必要があります。しかし、特に初心者のうちはどこが「重要事項」なのか判断できません。「マリンス有機化学」ではこのような「重要事項」が強調して記載されているので、覚えるべきことが明確にわかる構成になっています。
基礎から解説が始まって標準レベルまで到達可能
「マリンス有機化学」では、有機化学を初めて学ぶ人用の「入門レベル」から解説が始まり、しっかり勉強すれば、「標準レベル」の事項まで身につくようになっています。つまり「マリンス有機化学」を使って学習すれば、「入門レベル」~「標準レベル」まで網羅できます。このレベルまで網羅できれば、多くの国立大学の院試まで対応できるようになります。
問題演習が豊富
「マリンス有機化学」には、章末問題が用意されており、問題演習を多く行うことができます。
有機化学の知識を効率よく身に付けるには、「教科書で理論の理解・暗記」→「問題演習を通じたアウトプット」の流れで学習を進めることが大事です。
「マリンス有機化学」は、この効率の良い学習方法が取りやすい構成になっています。
「マリンス有機化学」のデメリット・悪いところ

- 解答が別売り、しかも英語
- 説明されていない分野もあり
解答が別売り、しかも英語
「マリンス有機化学」には豊富な章末問題がありますが、この章末問題の解答は英語で別売りです。「問題演習」の後の「答え合わせ」は必須なので「解答書」は購入する必要があります。「マリンス有機化学」はわかりやすい良い教科書ですが、解答が別売りというのはマイナスポイントです。「解答書」を読解することで、化学分野で使われる英語にも詳しくなれますが、初学者のうちは誤った解釈に陥らないためにも日本語で解説して欲しかったところです。
説明されていない分野もあり
他の中級レベルの教科書と同様、「マリンス有機化学」でも、一部の分野(隣接基関与、クロスカップリング、)に関する解説ありません。
他の中級レベルの教科書でも取り扱われていないので、この点は「マリンス有機化学」に限ったデメリットではありませんが、実際に研究を進めるためには、上記の分野も学習しておく必要があります。有機化学の研究者を志している人は、よりレベルの高い教科書も学習しておくことをおすすめします。
「マリンス有機化学」の次に使うべき教科書については後述します。
「マリンス有機化学」の使い方

- はじめの章を通読する
- 練習問題を解く
- 間違った問題の説明と解答を読み込む
- 間違った問題をもう1度解く
- 次の章に進む
- 最後の章まで進めたら、最初から周回する
はじめの章を通読する
まずは、初めの章を通読しましょう。「マリンス有機化学」では「重要事項」が強調されているので、その部分だけでも覚えるつもりで読み進めましょう。また、欄外のキャラクターのコメントも理解の助けになる良いコメントなので、しっかり目を通しておきましょう。ただし、この段階は全体の内容を把握することが目標なので、あまり几帳面に読み過ぎず、にテンポよく読み進めましょう。
練習問題を解く
章を読み終えたら「章末問題」を解いていきましょう。問題として出題されている部分は、その章のキーポイントです。①で通読した内容を思い出しながら、解いていきましょう。この際、どうしても思い出せない内容は、説明部分に戻って内容を確認しながら解きましょう。
まれに、説明を1章から最後の章まで通読し終えた後に、1章の問題から順に解いていく人がいますが、このやり方はおすすめしません。
「マリンス有機化学」は、分厚い教科書であるため、このやり方だと、最後の章を読み終えるころには第1章の内容はほとんど忘れていると思います。そのため、各章を読み終えるごとに、その章の問題でアウトプットし、知識の定着を図ることをおすすめします。
間違った問題の説明と解答を読み込む
②で間違った問題については、教科書の説明部分に戻って入念に読み込みましょう。
②で間違った部分は、その章のキーポイント、かつ、あなたの弱点でもあります。そのため、しっかり復習しましょう。
間違った問題をもう1度解く
②で間違った問題や確認しないと解けなかった問題を再度解きましょう。説明を読んだばかりなので、すぐ解けると思います。
すぐ解けないようであれば、理解が不十分です。その場合は、説明と解答を徹底的に読み込みましょう。
次の章に進む
第1章の問題までマスターしたら、同様の手順で次の章を勉強しましょう。以降は全く同じやり方で進めていきましょう。
「マリンス有機化学」は分量が多いので、挫折しそうになるかもしれませんが、途中でやめてしまうと意味がなくなってしまうので、根気強く地道に最後までやり切りましょう。
最後の章まで進めたら、最初から周回する
最後の章までやり終えたら、もう1度最初の章に戻り周回しましょう。2周目は重要ポイントがどこであるか把握できていると思うので、重要ポイントを確認しながらテンポよく読めば十分です。
説明を読み終えたら、「練習問題」を解きましょう。1度解いたことのある問題なのでそこまで詰まることなく進めていけると思います。
周回と聞くと大変に感じるかもしれませんが、2周目以降は1周目に比べてとても短時間で取り組めると思います。このやり方で、最低でも3周はしてください。
「マリンス有機化学」の到達レベル
- 多くの国立大学の院試は突破可能
- 高難度の教科書を読み進めるためのベースが完成
- 学部レベルの研究が実施可能になる
多くの国立大学の院試は突破可能
「マリンス有機化学」を完璧にすれば、ほとんどの国立大学の院試を突破できます。旧帝大の院試で合格最低点を獲得できるようになります。
ただし、東大や京大などの高難度の問題には対応できるようになるには、もう1段レベルの高い教科書を学習しておいたほうが無難です。東大や京大などの難しい問題を出題する大学院を受ける人は、次に紹介する教科書にも取り組んでおきましょう。
高難度の教科書を読み進めるためのベースが完成
東大や京大のような高難易度の院試を突破するためには「マリンス有機化学」だけでは足りません。もう1段レベルの高い教科書を学習しておく必要があります。しかし、いきなり高難度の教科書で学習しても、理解できない事項が多すぎて、上手く学習を進めることができません。
高難易度の教科書に取り組む前に、「マリンス有機化学」で基礎をしっかり身に付けておけば、難易度の高い教科書でもスムーズに読み進められるようになります。
学部レベルの研究が実施可能になる
「マリンス有機化学」をマスターすれば、学部レベルの研究であれば実施できるようになります。
もちろん、「マリンス有機化学」で取り扱っていない分野の研究を行うことになる場合もあると思いますが、「マリンス有機化学」で有機化学の基礎をしっかりと学んでおけば、その分野の勉強もスムーズに進めることができます。
「マリンス有機化学」の次
「マリンス有機化学」をマスターして、さらに有機化学を深く学びたい人や超難関大の院試を受験する予定の人には、「ウォーレン有機化学」をおすすめします。
この「ウォーレン有機化学」までマスターすれば、東大・京大の院試を確実に突破でき、研究者レベルに到達できます。
「ウォーレン有機化学」はレベルの高い教科書ですが「マリンス有機化学」をしっかりマスターした人であれば、十分取り組めるようになっています。
「マリンス有機化学」では取り扱われていない分野(クロスカップリング)などの新しい知識も身に付けることができ、「ウォーレン有機化学」までしっかり学習した後であれば、最新の論文も読みこなす力が身につきます。
有機化学を専門としたい人は「ウォーレン有機化学」までマスターしておくことをおすすめします。次の記事で「ウォーレン有機化学」の概要などを説明していますので、是非ご覧ください。
「マリンス有機化学」のまとめ
「マリンス有機化学」の概要をもう一度下記に記します。
- 語りかけるような解説で、講義を聴いているような教科書
- 重要事項が強調されていて、どこが大切かわかりやすい
- 初級者向けの教科書で標準レベルまで到達可能(他の有名教科書と同レベル)
「マリンス有機化学」は解説のわかりやすさ・親しみやすさ・読み進めやすさが売りの良書です。「堅苦しい説明を読んでいくことに苦痛を感じる人」や「難しい説明だと理解ができず、上手く学習が進まないことにストレスを感じる人」におすすめしたい教科書です。
多くの人が、堅苦しい説明文を読むのに嫌気がさして、途中で学習をやめてしまい、有機化学が嫌いになっていきます。「マリンス有機化学」は、親しみやすい解説で、詰まらず読み進めていけるので、多くの人が抱える悩みを解決してくれる本です。
「マリンス有機化学」は、私が学生時代には無かった教科書です。新しい教科書だけあって、古くからある教科書の弱点を克服し、現代のニーズに応えた良い教科書です。
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