大学や大学院で有機化学を勉強している人や研究室に配属され有機化学の研究をしている人も多いと思います。
そのような人の中には、次のような、悩みを抱えている人も多いと思います。
将来は、有機化学を使った仕事をしたい!そんな人におすすめの有機化学の教科書って何だろう?
研究者レベルの有機化学を学びたい人には「ウォーレン有機化学」をおすすめします。
しかし、「ウォーレン有機化学」に関して次のような悩みを持っている人も多いのではないでしょうか?
「ウォーレン有機化学」はどんなレベルの人が使えるの?到達レベルは?大学レベルの有機化学はコレ1冊でOKなの?
この記事では、「ウォーレン有機化学」を現役の有機化学者がの使い方やレベルを紹介します。
「ウォーレン有機化学」以外のおすすめの教科書は次の記事を参考にしてください。
大学で使うような専門書は高いですよね?
こういった専門性の高い教科書を少しでも安く購入したい人は、次の記事を参考にしてください。
「ウォーレン有機化学」の概要
「ウォーレン有機化学」は、(上)と(下)の2冊からなる大学院レベルの有機化学の教科書です。
ウォーレン有機化学の最大の特徴は次のようになります。
- 暗記ではなく理解に重きを置いた解説
「ウォーレン有機化学」では巻矢印と軌道を用いて、「なぜこのような反応が起こるのか?」「どういう場合にこの反応が起こるのか?」をわかりやすく解説してくれます。
有機化学を学んでいく時、反応機構を理解しないまま勉強を進めると、反応を丸暗記することになります。星の数ほどある有機反応をすべて暗記するのは不可能です。
また、実際の研究現場では、初見の反応でどのような生成物が生じるか予想する必要があったり、自分で新規反応を開発する場面があります。
こういった研究を行うためには、有機化学を暗記するのではなく理解しておく必要があります。
「ウォーレン有機化学」をマスターすれば、有機化学を理解できるようになるので、実際の研究現場で求められる能力が身につきます。
また、「ウォーレン有機化学」の難易度は高いです。難易度は高いですが、将来的にプロの有機化学者を目指す人であれば、押さえておくべきレベルの知識が詰まった教科書です。
「ウォーレン有機化学」は、他の教科書には載っていない場合が多い「ヘテロ環の化学」や「有機金属化学」などの分野も扱われています。この「ヘテロ環の化学」や「有機金属化学」の分野は、難易度が高いものの、実際の研究現場では理解していて当たり前の知識です。「ウォーレン有機化学」では、これらの分野まで丁寧に理解できるように解説してくれている点は大変優秀です。
「ウォーレン有機化学」は理解に重きを置いた解説がされ、難易度の高い分野も取り扱っているため、到達レベルも高いです。
「ウォーレン有機化学」をマスターすれば、すべての大学院の院試を突破できることはもちろん、実際に自分で研究を行えるレベルに到達できます。
- 有機反応の「理解」に重きを置いた教科書
- 難易度の高い教科書
- 他の教科書では省略されがちな分野も収録されている
- 研究活動が行えるレベルに到達できる
「ウォーレン有機化学」の対象者
- 大学標準レベルの有機化学を勉強済みの人
- 有機化学を専門とする(したい)人
- 問題演習もやりたい人
大学標準レベルの有機化学を勉強済みの人
「ウォーレン有機化学」は、難易度の高い教科書ですので、大学標準レベル(大学での定期テストレベル)の有機化学を勉強済みであることが望ましいです。
sp3軌道?アルドール反応??
なにそれ??聞いたことないんですど!
このような有機化学初心者は「ウォーレン有機化学」で勉強を進めるのは難しいと思います。このような人は、まず標準レベルの有機化学を学習しましょう。
標準レベルの有機化学を学ぶのには、「ボルハルト・ショアー現代有機化学」がおすすめです。
「ボルハルト・ショアー現代有機化学」については、次の記事で特徴や使い方などを紹介していますので、是非ご覧ください。
有機化学を専門とする(したい)人
「ウォーレン有機化学」は、有機化学を専門とする人、有機化学のプロを目指す人におススメです!
「ウォーレン有機化学」は難易度の高い教科書ですが、その分、到達レベルも高いです。
有機化学の専門家になりたい人は、最低限このレベルの教科書はマスターしておくべきです。
問題演習もやりたい人
「ウォーレン有機化学」には、各章末に問題が掲載されています。
有機化学をマスターするためには、「知識の理解・暗記(インプット)」の後に、「問題を解く(アウトプット)」ことが必須です。
「ウォーレン有機化学」は、この有機化学をマスターするのに必須の流れがやりやすい構成になっています。
問題の難易度は高いですが、有機化学の専門家を目指す人はぜひ取り組んでください。
「ウォーレン有機化学」のメリット
「ウォーレン有機化学」のメリットは次のようになります
- 「理解」に重きを置いた解説
- 基礎~応用レベルの事項を網羅
- 基本的な教科書では扱っていない分野も収録
- 軌道についての解説も豊富
- 演習問題も豊富
「理解」に重きを置いた解説
「ウォーレン有機化学」は、「理解」に重きをおいた解説をしてくれる教科書です。
「なぜこの化合物・官能基は、こような反応が起こるのか?」「どういう場合にこの反応が起こるのか?」の理由をわかりやすく解説してくれます。理由を丁寧に解説してくれるので、自学もしやすいです。
「理由」を解説してくれるので、単純な「暗記」にではなく、「応用のきく知識」が身につきます。「応用のきく知識」が身につくので、初見の反応でも自分の頭で反応機構を予想できるようになります。
自分で研究を行う段階になると、未知の反応を自分で開発する必要も出てきます。
そういった場合には、この「応用のきく知識」を身につけておく必要があります
「ウォーレン有機化学」をマスターすれば、有機反応を「理解」できるので、実際に自分で研究を行う段階になっても、通用するレベルに到達できます。
基礎~応用レベルの事項を網羅
「ウォーレン有機化学」では、有機化学の基礎~応用事項を網羅しています。
この1冊をマスターすれば、東大や京大の大学院入試にも十分対応できるようになります。また、自分で研究を行えるレベルに到達できます。
軌道についての解説も豊富
一般的な有機化学の教科書では、有機反応を巻矢印(電子の移動)のみで解説されていることがほとんどですが、「ウォーレン有機化学」では、巻矢だけでなく、軌道に関する解説も豊富です。
軌道に関しては苦手とする人が多いのは事実ですが、プロの有機化学者を目指す人であれば、軌道に難する知識は身につけておく必要があります。
「ウォーレン有機化学」を勉強しておけば、軌道に関する知識も身につくので、他の人より頭一つ向けた力が身につきます。
基本的な教科書では扱っていない分野も収録
基本的な有機化学の教科書では、「ヘテロ環の化学」や「有機金属化学」などの分野は扱っていない場合がほとんどです。
「ウォーレン有機化学」では「ヘテロ環の化学」や「有機金属化学」などの分野についても、基礎から応用まで丁寧に解説してくれます。
「ヘテロ環の化学」や「有機金属化学」は、有機化学の専門家を目指すのであれば絶対に身に着けておくべき知識です。
有機化学者を目指す人は「ウォーレン有機化学」を使ってこれらの分野も確実に勉強しておきましょう。
演習問題も豊富
「ウォーレン有機化学」には、各章末に問題が掲載されており、問題演習を行うことができます。
有機化学では、教科書の説明・解説を理解し、その後に問題演習を通してアウトプットを行うことが最も効率の良い学習法になります
「ウォーレン有機化学」では、この最も効率の良い学習方法を自然と実践することができます。
「ウォーレン有機化学」のデメリット
- 量がとても多い
- 解答が別売り、しかも英語
- 最初の1冊には微妙
量がとても多い
「ウォーレン有機化学」は解説・説明が丁寧で、問題数も多いことがメリットですが、これが同時にデメリットにもなります。
解説・説明が丁寧で、問題数が多いということは、必然的に量が多くなります。量が多いため、勉強が全然進まず、途中で挫折する人が続出します。
また、有機化学を学び身につける上で最も大切な「繰り返し取り組む」がおろそかになりがちです。
1度読んだだけで、「ウォーレン有機化学」の内容を理解・暗記できるほど天才はまずいないと思いますので、何度も繰り返し取り組むことが極めて重要です。
そのため、途中であきらめることなく、最後までやり切りましょう。また、1周しただけで満足することなく何周も周回しましょう。
解答が別売り
「ウォーレン有機化学」は問題がたくさん載っているのですが、この解答が別売りとなっています。しかも、解答は全て英語で書かれています。
問題を解いた後の答え合わせは必須ですので、解答は購入することが望ましいです。
「ウォーレン有機化学」はとても良い教科書なのですが、解答が別売りで英語というのがマイナスポイントです。ただし、わざわざ別冊になっているくらいなのでソコソコ詳しい解説となっています。
また、英語で書かれているといっても簡単な英語ですので、英語が苦手な人でも問題なく読みこなすことができると思います。
多少お金がかかりますが、プロの有機化学者を目指す方は購入しましょう。
最初の1冊目には微妙
上でも説明しましたが、「ウォーレン有機化学」はレベルの高い教科書なので、最初の1冊目にはちょっと微妙だと思います。
最初の1冊目に、「ウォーレン有機化学」に選ぶと、内容が難しすぎて学習スピードが遅くなると思います。
「ウォーレン有機化学」は分量も多いため、学習スピードが遅いと途中で挫折する可能性が高くなります。
そのため、有機化学初心者は、まず基礎~標準レベルの有機化学を学習しましょう。
基礎~標準レベルの有機化学を学ぶのには、「ボルハルト・ショアー現代有機化学」がおすすめです。
「ボルハルト・ショアー現代有機化学」については、次の記事で特徴や使い方などを紹介していますので、是非ご覧ください。
「ウォーレン有機化学」の使い方
「ウォーレン有機化学」の基本的な使い方は次のようになります。
はじめの章を通読する
まずは、初めの章を通読しましょう。
初めて読む場合は、どこが重要ポイントか判断しづらいと思いますので、ざっと内容を把握することを目標にしましょう。
章末の問題を解く
章を読み終えたら、章末の問題を解いていきましょう。
問題として出題されている部分は、その章のキーポイントです。1で通読した内容を思い出しながら、解いていきましょう。
この際、どうしても思い出せない内容は、説明部分に戻って内容を確認しながら解いていくと、より効率が良いです。
まれに、説明を1章から最後の章まで通読し終えた後に、1章の問題から順に解いていく人がいますが、このやり方はおすすめしません。
「ウォーレン有機化学」は分厚い教科書であるため、このやり方だと、最後の章を読み終えるころには第1章の内容はほとんど忘れていると思います。
そのため、章を読み終えるごとに、その章の問題でアウトプットし、知識の定着を図ることをおすすめします。
間違った問題の説明と解答を読み込む
2で間違った問題や説明部分に戻って確認しないと解けなかった問題に関連する説明と解答を入念に読み込みましょう。
2で間違った部分は、その章のキーポイント、かつ、あなたの弱点です。
そのため、しっかり復習しましょう。
間違った問題をもう1度解く
2で間違った問題や確認しないと解けなかった問題を再度解きましょう。
説明を読んだばかりなので、すぐ解けると思います。
すぐ解けないようであれば、内容理解が不十分です。
その場合は、説明と解答を徹底的に読み込みましょう。
次の章に進む
第1章の問題までマスターしたら、同様の手順で次の章を勉強しましょう。
以降は全く同じやり方で進めていきましょう。
「ウォーレン有機化学」は分量が多いので、挫折しそうになるかもしれませんが、途中でやめてしまうと何の意味もなくなってしまうので、根気強く地道に最後までやり切りましょう。
最後の章まで進めたら、最初から周回する
最後の章までやり終えたら、もう1度最初の章に戻り周回しましょう。
2周目は重要ポイントがどこであるか把握できていると思うので、重要ポイントを確認しながらテンポよく読めば十分です。
説明を読み終えたら、問題を解きましょう。
1度解いたことのある問題なので詰まることなく進めていけると思います。
周回と聞くと大変に感じるかもしれませんが、2周目以降は1周目に比べてとても短時間で取り組めると思います。
このやり方で、最低でも3周はしてください。
3周する頃には、大学基礎レベルの有機化学をほとんど習得できると思います。
「ウォーレン有機化学」の到達レベル
「ウォーレン有機化学」をマスターした際の到達レベルは次のようになります。
- 東大・京大院試合格
- プロの有機化学者レベルに到達
東大・京大院試合格
「ウォーレン有機化学」をマスターすれば、東大・京大の院試でも突破できるようになります。
東大・京大の院試では、かなりレベルの高い問題が出題されます。
また、東大や京大の院試験では、生成する化合物・反応機構を解答するだけでなく、反応機構や選択性を説明させる問題が出題されます。
有機反応の「理解」に重きが置かれている「ウォーレン有機化学」で勉強しておけば、東大・京大レベルの説明問題にも対応できるようになります。
プロの有機化学者レベルに到達
「ウォーレン有機化学」をマスターすれば、自分で研究が行えるレベルに到達できます。
また、論文の内容も理解できるレベルに到達できます。
「ウォーレン有機化学」をマスターした後は、実験スキルを磨き、「最新の研究」と「自分の研究分野の論文」を読んで、知識をより強化すればOKだと思います。
これらの論文の十分理解できるレベルに到達できます。
「ウォーレン有機化学」の次
「ウォーレン有機化学」をマスターした人は、覚えておかなくてはならない有機化学の知識は習得できています。
あとは問題集を使って、問題をガンガン解いて、知識をより定着させたり、新しい知識を得ていきましょう。
「ウォーレン有機化学」をマスターした人は、「有機化学演習」と「演習で学ぶ有機反応機構」を使って問題を解いていきましょう。
この問題集をマスターすれば、東大京大の院試でも確実に突破できます。
これらの問題集は難易度が高く、解説も詳しくないので、わからない箇所があった場合には「ウォーレン有機化学」を使って調べるようにしましょう。
「有機化学演習」と「演習で学ぶ有機反応機構」の詳細は次の記事で紹介していますので、是非ご覧ください。
「ウォーレン有機化学」のまとめ
「ウォーレン有機化学」は、プロの有機化学者を目指す人、将来は有機化学に関する仕事に就きたい人に最もおススメの教科書です。
「ウォーレン有機化学」は難易度は高いですが、到達レベルはとても高いです。
有機化学を極める上で、「ウォーレン有機化学」に書かれている知識は必須です。
有機化学を極めたい人は「ウォーレン有機化学」をマスターしましょう。
- 難易度が高いが到達レベルも高い
- 演習問題も豊富
- 根気強く使おう
「ウォーレン有機化学」以外のおすすめの教科書は次の記事を参考にしてください。
大学で使うような専門書は高いですよね?
こういった専門性の高い教科書を少しでも安く購入したい人は、次の記事を参考にしてください。
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